
乳幼児突然死症候群(SIDS)を予防するための「仰向け寝」指導が赤ちゃんの頭の変形(絶壁頭)を招いたとして、高知市を相手取った訴訟(4,243万円の損害賠償請求)が提起されました。
この訴訟問題は産後ケア事業や医療業界に大きな波紋を広げています。
赤ちゃんの尊い命を守るためのガイドラインと赤ちゃんの健やかな成長を願う親の思いが衝突して発展した問題ではありますが、なぜこのようなことが起こったのでしょうか。
Contents
訴訟の概要と親の主張

経緯
2023年3月生まれの女児が、高知市から派遣された助産師から乳幼児突然死症候群(SIDS)予防のために「硬い布団で仰向けに寝かせるべきだ」という指導を受けました。
訴えの内容
両親は、この指導に忠実に従った結果、女児の後頭部が平らになる重度の「位置性頭蓋変形」になったと主張し、約4,243万円の損害賠償を求めています。
原告
女児とその両親。
被告
高知市、助産師、高知県助産師会。
争点
SIDS予防の指導と頭部変形のリスクをめぐり、医学的な見解や指導の適切性が争点になるとみられています。
赤ちゃんの突然死を予防するための指導により市や助産師が訴訟されてしまったのは非常に残念です。訴訟リスクがあると助産師を目指す方が減る可能性があります。
言われたことだけを忠実に守るのではなく、自ら知識をつけていくことが重要です。頭の形は早期であれば改善することができます。
SIDS予防ガイドラインと頭部変形のリスク

乳幼児突然死症候群(SIDS)とは、元気だった赤ちゃんが睡眠中に予兆なく突然亡くなってしまう病気です。原因はまだ不明ですが、生後2~6か月に多く、日本での発症頻度は6,000~7,000人に1人と推定されています。
厚生労働省や日本小児科学会、こども家庭庁等からSIDS予防に関してのガイドラインが提示されています。
睡眠環境について
SIDSの予防として、以下の内容が推奨されています。
1歳までは仰向け寝が基本
うつぶせ寝はSIDSのリスクを高めるとされており、医学的な理由がない限り仰向けで寝かせましょう。
柔らかい寝具は避ける
枕、ぬいぐるみ、毛布などは赤ちゃんの口や鼻を塞ぐ可能性があるため、ベビーベッドには置かないようにします。
固めのマットレスを使用
柔らかすぎる寝具は窒息のリスクがあるため、赤ちゃん用の固めのマットレスを選びましょう。
ベビーベッドの使用と安全確認
柵を常に上げておき、隙間に頭や体が挟まらないように注意します。PSCマーク付きの安全基準を満たした製品を選びましょう。
育児習慣の工夫
できるだけ母乳で育てる
母乳育児はSIDSの発症率を下げるとされており、無理のない範囲で取り入れることが推奨されています。
禁煙を徹底する
妊娠中の喫煙や副流煙はSIDSのリスクを高めます。赤ちゃんの周囲では喫煙を控えましょう。
添い寝・部屋の使い方
親と同じ部屋で、別の寝床で寝かせる
添い寝は窒息のリスクがあるため、赤ちゃんはベビーベッドで寝かせ、親と同じ部屋で見守る「ルームシェアリング」が推奨されます。
寝返りへの対応
赤ちゃんが自分で寝返りできるようになったら、仰向けに戻す必要はないとされています。ただし、周囲に柔らかいものを置かないよう注意が必要です
これらの対策は、SIDSだけでなく窒息事故の予防にもつながります。赤ちゃんの安全な睡眠環境づくりを意識して、安心できる育児を目指すことが重要です。
頭部変形のリスク
今回、訴訟にまで発展した助産師による「固めの布団で仰向け寝させる」という指導はSIDS予防の観点からは正しいのですが、一方で、頭が変形する可能性があるというのも確かです。
新生児は生まれる際に産道を通るため頭蓋冠を形成する骨は完全に硬くなっておらず、空いている部分等もあること、生後 9 か月までに頭蓋内容量は出生時の 2 倍になること等がこれまでに報告されており、これらの期間は頭の形が変形しやすいとされています。
ですので、長時間同じ体勢の睡眠、向き癖等によって頭の形が大きく変形することがあります。
頭部変形について知っておいてほしいこと、考えておくべきこと

赤ちゃんを育てるというのは人生の中でも非常に特殊で大変な期間だと思います。
そして、その期間の対応の仕方が赤ちゃんの一生を決めてしまう可能性があります。自分の健康のため、赤ちゃんの将来のために正しい知識をつけ、どのように大切な期間を過ごしていくかを考えておくようにしましょう。
知っておいてほしいこと(対策)
先述した通り、赤ちゃんの頭の形というのは非常に変形しやすいためきれいな形に保つのはかなり難しいですが、タミータイムという時間を設けることで頭の形の変形を低減することはできます。
産後で体力が低下している中、こういった時間をとるのは大変かもしれませんが、赤ちゃんが大きくなったときのことを考えて、少しずつでもよいのでタミータイムを実施していくようにしましょう。
頭の変形については日ごろから確認するようにしましょう。少し左右で凹み方が違う場合や後頭部が扁平になってきたときはタミータイムの時間を増やす等して様子を見てみましょう。それでもひどくなる場合はヘルメットでの治療を検討した方がいいかもしれません。
頭が変形しているかどうかはアプリでセルフチェックしてみることがオススメです。
セルフチェックで頭の形に気になる点があった場合は専門家への相談がオススメです。
かかりつけの小児科が赤ちゃんの頭の形に関しての知識や医療機器が乏しいと、「気にしすぎ」とあしらわれて必要な治療が受けられない可能性があります。
その「気にしすぎ」が子どもの将来の悩みを無くすかもしれないので、まずは専門家に気軽に相談するようにしましょう。
考えておくべきこと
赤ちゃんの頭の変形は、赤ちゃんの頭が柔らかい期間(生後~9ヵ月程度)しか改善することができません。
つまり、時間との勝負になります。
有効な改善方法としてヘルメット治療が挙げられますが、約40~60万程度かかる高価な治療のためすぐに治療を決断できない人がほとんどだと思います。
子どもの将来をどこまで考えて行動するか、パートナーや両親とよく話し合って考えておくことが重要です。